【アニメーター絵本】森やすじ『ハリエモンのくすりはおいしいか? ハリネズミの名医さん大活躍』
吉祥寺で森やすじさんの展示があると聞いて行ってきました。吉祥寺の一日に来るのは2019年に開催された奥山玲子さんの銅版画展以来です。

『ふしぎなカバン』の他、『へんしんバットのひみつ』、『ハリエモンのくすりはおいしいか?』などの絵本の代表作が展示されていて、少ないながら充実の会場でした。
森やすじさんは今年で生誕100周年のアニメーター。代表作は東映アニメーションのシンボルマークにもなっている東映まんがまつり「長靴をはいた猫」。
記念の年だし、何か刊行物や展示が他にもあればと期待してしまいます。
家に帰って、さっそく『ハリエモンのくすりはおいしいか?』を確認してみました。

『ハリエモンのくすりはおいしいか? ハリネズミの名医さん大活躍』
作:岸田衿子 絵:森やすじ
出版社:徳間書店
刊行年:1989年
文章を手掛けたのは詩人の岸田衿子さん。岸田さんは『アルプスの少女ハイジ』の主題歌の作詞を担当していますが、オープニングの作画は森さんで、ふたりは少なくとも10年前から仕事を一緒にしていたことになります(『ハリエモン』は月刊アニメージュ1985年1月号~1986年12月まで連載)。翌年の『フランダースの犬』のオープニングも、両氏のタッグです。
帯裏の情報を見るに、アニメージュのイラスト&ポエムシリーズとして、ポエム版『となりのトトロ』に続いて刊行されたよう(同時発売は『元気になれそう 映画「魔女の宅急便」より』)。

『元気になれそう』と同じ判型で同時発売

トトロの詩画集とは別判型

帯の表には宮崎駿監督による推薦文が書かれていますが、文章自体はカバー袖の推薦文からの抜粋。
ー哲学を極め、農業にいき着いた漢方医のハリエモンが、動物村のどうぶつたちを診察する前半パートと、イタチを供に連れて旅をする後半パートの2部構成。小動物から大型動物まで、種々様々な生きものをハリエモンが診察し、時には周囲の動物たちが助手を務めたり心配そうに見守ったり、表情も豊かに生き生きと描かれています。
展示では「キリ子さんの悩み」の原画があったので絵本と比較してみました。


絵本版だと背景の空やインパラなどが白抜きになり、芝やキリンの毛は濃淡なくベタ塗りされています。
因みに、森さん最初の画集(保育イラストカット集を除く)である『もりやすじの世界』では、原稿通りでした。

日本のアニメーション界の神様と呼ばれる森さんは絵本の世界でも膨大な作品を残していますが、現在そのほとんどは絶版で、入手は容易ではありません。自分もそれほどたくさん所有している訳ではないですが、今後も不定期で紹介したいです。
